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居合の一門を去ってブランク5年
平成30年の北陸豪雪から、父の死と母の介護に伴う実家の整理。そしてコロナ禍へと。なんだかんだと、仮に一門を去らなかったとしてもまともな稽古などできなかっただろう。
それでも自宅の狭い空間で、運動とは言えないまでも素振りや納刀をやりつつ、定期的にお刀の手入れはしてきた。しかし鑑賞に浸る目的でない真剣を眺めていても充足感に至ることはなかった。
お刀は使わないとな…と思いはしても、居合を上手になりたいという気持ちにはならなかった。
ウィズコロナからアフターコロナへ向かうそんな日々の中で、地元のお祭りをきっかけにご縁のあったお寺さんの一部スペースをお借りできることに。
思い切り振ってみよう!
当時使っていたボロボロの袴や帯を引っ張り出し、翌日の準備をしながらふと思った。
覚えてるかな。
寝しなに、あれこれ思い出そうとしても、技の名前が途中思い出せない。やむなくググり名前は出てきたものの
どんなんだっけ…
翌日お寺さんにお邪魔して、半着を着て帯を巻き袴を穿く。うーん手が勝手に動く。当時稽古のときにだけにしていた帯の結びや袴の前紐の結びなど、頭で考えずとも手が勝手に動く。
居合に入る前のお刀の持ち方や刀礼などの所作も勝手に動く。まるで一週間ぶりに稽古するかのようだ。
今までは神前での稽古だったが、今回は…いや今回からは仏前だ。
しかし場所はどこであれ、手が勝手に動く。
「体で覚える」なんて云うが、きっと多分、居合をやっていた頃の反復稽古で脳に焼き付けられたのだろう。オレが凄いと言っているわけではないのだ。単なる分析なのだ。
途中疲れて、汗だくでハアハアしながら本堂玄関でお刀片手に休んでいると、散歩中の参拝者が私を見てギョッとする。人を切ったと思われたか…住職ごめん。
参拝者がやや早歩きで山門を出たあとに宅配業者がやってきた。荷物を持って私が視界に入ると、一歩後退りした。切られると思われたか…住職すまん。
兎も角、毎週日曜、続けてみる、か。

一門皆さんにはご迷惑をおかけしませんからね by おっとこまえ