VIVA!!山伏!
おっこ前の自宅から石川県立能楽堂まで徒歩で約三十分
夕刻五時に自宅を出て約十分後、土曜の片町はまだまだ静かなものだ。
竪町通りをぶった切る(横切ったってことね)と柿木畠には七夕飾りが通りを彩っていた。
七夕飾りといえば短冊に願い事…
懐かしいな…「トラックに漫画書きたい」って書いてたよ小学校のとき…
ハハハ…ハ…
でも「VIVA人生」には参った…
バンザイ!!前向き人生!二度見で振り返る!
近隣のスーパーに寄るとそこにも七夕飾りが…
「マックにつれていってください」
…もう…脈がっ…
さてさて…
平成27年度「観能の夕べ」の最初を飾る狂言は
梟山伏
山伏:炭哲男
兄 :山田譲二
弟 :中島恭介
後見:能村祐丞
狂言之師、炭哲男の山伏を初めて観ることができる!
簡単ですがあらすじを…
和泉流狂言【梟山伏】 弟の太郎が山から帰るとなにやら物の怪がついたようだ 薬を飲ませてはみたが変化は見られないので この辺りの尊い山伏に加持(不思議な力で護って欲しい)をお願いしようと尋ねる 山伏が太郎に声を掛けても返答がない そこで太郎の脈を取ってみる事に… 太郎のうな垂れた頭を掴んで右へ左へガシガシ揺さぶる 変わった脈の取り方だと疑問に思う兄 物の怪の憑いた者は頭脈といって頭に脈があるものだと山伏 ひと祈りして物の怪を取り出してやろうと言う そして少々自慢話?…のあと祈りにはいる 「ぼぉ~~ろぉ~ん~、ぼぉ~~ろぉ~んン」 「ほぉ~~~ん~」 すると何やら鳥の鳴く真似をしたようなので、兄に思い当たる節をきくと、太郎は山で梟の巣を落としたという。 さては梟が憑いたと考えた山伏はカラスの印を結んで加持すればたちまち良くなるだろうと再び祈る 「ぼぉ~~ろぉ~ん~、ぼぉ~~ろぉ~んン」 暫くすると兄にまで梟が取り憑いた 驚いた山伏だが、三つのお山(出羽三山のこと)に願掛けて祈れば効かぬわけがないと再々祈る 「ぼぉ~~ろぉ~ん~、ぼぉ~~ろぉ~んン」 暫くするとじわじわと梟に憑かれた兄と太郎が山伏の左右から近づいてくる 慌てて右へ左へと祈り続けるがついには山伏も力尽きその場に崩れてしまう。 梟に憑かれた兄と太郎はその場を去っていく 「ほぉ~~~ん~」 残された山伏もついには梟に取り憑かれその場を去っていく。 「ほぉ~~~ん~」
さて山伏の登場といえば、「出羽の羽黒山より出でたる山伏」が定番だが、今回の登場は能『葵上』横川小聖のパロディであろう。
九識の窓の前
十乗の床のほとりに
瑜伽の法水をたたへ
三密の月を澄ます所に
案内申さんとは誰そ
因みに狂言「茸」も梟とキノコの違いで似た箇所が多い
少々自慢話?などと書いたが
実際のセリフを見てみよう
山伏:「それ山伏といつば山伏なり、なんと聞こえた事か」 兄:「聞こえたことで御座る」 山伏:「兜巾といつば、布切壹尺計真っ黒に染、むさとひだを取って、頭にちょんと戴く故の兜巾なり、何と殊勝な事か」 兄:「御殊勝な事で御座る」 山伏:「"いらたかの数珠"ではのうて、むさとしたる木の切れをつなぎ集め、"いらたかの数珠"と名づけつつ、明王の索にかけて祈るならば、などか奇特のなかるべき」 山伏:「ぼぉ~~ろぉ~ん~、ぼぉ~~ろぉ~んン」
現代風オレ風に訳すと…
「俺は見てのとおり山伏だ!わかるか?」「布切れ一尺ばかりを真っ黒に染めてテキトーにひだをとった兜巾だぜ!すげーだろ?」「その辺のテキトーな木片を繋いで、不動明王が持っている縄のごとく祈れば、効かないわけが無い!」「ぼぉ~~ろぉ~ん~、ぼぉ~~ろぉ~んン」
ってなとこだろうか…
なんとアメリカンな山伏だ…VIVA!!
兄に弟が梟に取り憑かれ理由をしっかり聞いた後に「皆まで云うな」と言い「梟の憑いたに極まった」という山伏がなんだか憎めない…
梟山伏では「ぼぉ~~ろぉ~ん~、ぼぉ~~ろぉ~んン」がとても多い
後半はほとんど「ぼぉ~~ろぉ~ん~、ぼぉ~~ろぉ~んン」と梟の鳴きまね「ほぉ~~~ん~」ばかりだ
弟の太郎のセリフに関しては登場から最後まで「ほぉ~~~ん~」のみ
しかしこの祈りの声と梟の鳴く声はただ聞いていてはならないですよ!
擬音はセリフ文字がシンプルなだけに狂言方の技量が問われると思います。
今年の2月に柿山伏で私も経験したから良くわかります。
この「ぼぉ~~ろぉ~ん~、ぼぉ~~ろぉ~んン」がとても苦しいのだ。師炭哲男演じる山伏も途中声の出し様を変化させたような瞬間があったことはなんとなくわかったのだが、も~さすが!の一言にすぎる。
だんだんと声のチカラが弱まる前に仕様を変えるのは、もちろん素人にはムリだな。
また、梟の鳴きまね「ほぉ~~~ん~」は先日師に伺ったのだが、非常に難しいそうだ。素人から観ると演手各々の違いかな?くらいにしか感じないが、師に言わせると全然声が出ていないという。
反感買いそうだがレイザーラモンHGの「ふぉー!」も近からず遠からずか…
この話を伺ったのが観能の夕べが始まる前だったので、今回の兄弟の梟の鳴きまねはいかがであったでしょうか。
さて最後に山伏が梟に憑かれた兄弟にじわじわと追込まれる画はもう【ゾンビ】か【バイオハザード】だな。
最後は山伏まで祈りに疲れて梟に憑かれた…
まさにギャグホラーだ
去っていった兄弟と山伏はその後どうなるのだ??
隔離されるのか?
どこかでアリスが目覚めるのか?核が落とされるのか?(知らない人ゴメン)
山伏が梟に憑かれたというオチは面白いが、顛末がはっきりしないところが狂言の面白さのひとつだ。
近年の映画やドラマはほぼ顛末がはっきりしていて、"ここで終わりですよ"というのがはっきりしている場合が多い。
ところが狂言は、"さてさてどうなるのやら…"で終わるのである。
続きのストーリーはないのに、最後に次回の予告を見ているような感じにさせてしまう。
VIVA狂言!!
八月末まで毎週土曜日【観能の夕べ】が開催されます!
野口英世さん一枚持って是非観に行こう!