狂言を楽しむ会 金沢
萬狂言金沢が主催する「狂言を楽しむ会」も今年で10回か11回くらい?かな?
平成28年2月…
雨風強く大荒れの天気となった今年のバレンタインでーは北陸地方に春一番まで届けてくれた。
翌日からは寒気が戻り、思わぬドカ雪に
「なんだよ春一番!」
なんてコボしてはみたものの、一般的に春一番が吹いた日は気温が上昇し、翌日は西高東低の冬型の気圧配置となり、寒さが戻ることが多いらしい…
しかも同じような南風が複数発生した場合は「春二番」「春三番」と呼ぶこともあるそうだ…
さて今年の「狂言を楽しむ会」
狂言教室の生徒さんたちによる発表会は「狂言四番」「狂言小舞二番」そしてプロの若手狂言師による「狂言小舞三番」と最後に能村祐丞師による「番外狂言小舞一番(名取川)」が披露された。
舞台裏なども含めて少し紹介できればと思う。
萬狂言金沢主催の狂言が開催されるとき概ね展示されています。
能村祐丞師所有の能狂言面
一番手前の眼がギョロッとしている面が「小癋見」
その左の女面のような面が「喝食」と呼ばれる、禅寺に住み食事の世話などをした半僧半俗の少年の面。
その左が狂言でもよく出てくる「武悪」今回の狂言「朝比奈」の閻魔大王がつけている面も「武悪」。
その左の女面はわからないな~
石川県立能楽堂に入って受付付近で能狂言面が十面程度展示されていますので一度ご覧頂ければと思います。
舞台裏に入ると左側に楽屋、右側に鏡の間がある。
能舞台の左側の揚幕から演者が出てくるわけだが、その揚幕の裏手が鏡の間という。
控えの狂言師ら自らが、揚幕両サイドの竹の棒を上下に動かし、演者を送り出したり迎え入れたりしている。
揚幕のちょうど反対側に大きな三面鏡があり、場内を見渡せる格子状の窓(物見窓,奉行窓,あらし窓ともいう)もあるので、本番前に身なりを整え、会場の雰囲気を確認したりしながら出番に備える空間になっている。
また場内アナウンス用の音響設備などもおかれている。
鏡の間から通路を挟んだ向かいに装束着付室がある。
そこには当日公演される番組すべてに使用される装束と小物が事前に用意されている。
これらも狂言師自らが着付けを行い、装束に不具合があればその場で繕ったり、着付けが不自然なときは縫い付けたりと、すべて自分たちで行っている。
狂言師たちが自分たちだけで行うのは能舞台上だけでなく、舞台裏に至ってもすべて自分たちで行っているのだ。
そういえば初めて能村祐丞師にお会いした時に、「居合やってるんだって?ちょっとやってみて」といって画像の御刀を手渡されたことがある。
狂言のなかでは太刀の部類にはいる御刀だが、脇差のような長さだろうか…2尺も無いように思えたが、非常に軽くてたぶん木製?かな…反りも深く、とてもお遊びでも居合をするような代物ではなかったことを記憶している。
そんな能村祐丞師も過去に居合を嗜んでいたというから驚いた。長谷川英信流をやっていたという祐丞師は画像の御刀を手にして刀を抜きつけて見せてくれた。細かな手の運びは私たちの居合にとても似ていたが、「どこで、だれから…」などとは聞かなかったし聞かれなかった。
ただ真剣であろうとおもちゃのような御刀であろうと扱い方は同じだ。…とオモウ。
狂言 魚説法
親の追善のためのお堂を建立し、その供養のため住職に説法を執り行ってもらう予定が、あいにく住職が不在のため仕方なく見習いの小僧に説法を頼んだ。しかし小僧は説法などできるわけもなく、魚の名をならべて説法するだけ。
供養の場で魚のような生臭い話に立腹した施主は小僧を叱るが、小僧もまた魚の名前で反論する。施主もついに扇をひろげて小僧の頭を打つ。
画像はそんな場面なのだが、小学生から狂言を習い始めたこの小僧役の生徒さんも大学受験を控え今回が最後の舞台。施主役で師匠の炭哲男師の心中を察すると我がことのように微笑ましくもあり寂しくもあり。
狂言 二人袴
親子で舅宅を訪ねるも袴が一枚しかなく、親子で順番に袴を着けかえ舅の前に顔を出すが、舅もついに一緒に出てくるよう願い出る。
しかたなく袴を前後で裂き、親子で裂いた袴を前にあてがい舅の前に顔を出す。酒を振る舞われた挙句皆で舞おうと誘われ、後ろを見られないようにぎこちなく舞って見せるが、太郎冠者に見られ舅とともに笑われてしまう。
画像はそんな場面なのだが、能舞台の正面からでは後姿が見える場面は少なく、狂言は脇正面から観るのも面白いと思う。
狂言 膏薬練
京の都と鎌倉の膏薬練が互いの膏薬の系図を自慢しあい、薬種を自慢しあい、最後には膏薬を鼻につけて吸い比べをする。
「鎌倉の方へ吸い寄せて見せよう~」「いかないかな、吸い寄せらるる事ではない~」
などと狂言独特の滑稽な争いを繰り広げる。
画像はそんな場面なのだが、この狂言にはプロの狂言師は出ていない。おっとこ前の先輩方なのだが男にも勝るとも劣らない発声の強さで、安心して聞いていられるし、女性同士の狂言はめったにお目にかかれるものではないので、それも付加してとても面白い。
狂言 朝比奈
あの世とこの世をへだてる境界、六道の辻に閻魔王が現れ、亡者を待ちうけている所へやってきた武者、朝比奈三郎義秀。
閻魔王は朝比奈三郎義秀に責めかかり、地獄へ連れていこうとするが動ずる気配がないし、全く歯が立たない。
画像はそんな場面なのだが、狂言には珍しく囃子方と地謡が登場するが、さらに珍しいことに歴史上の武者が出てくる。様々な道具を背負った亡き武者の装束も見どころのひとつだ。閻魔王を道案内にして極楽へ向かう武者という設定が面白い。
さて…
画像は用意していないがプロアマ交じって狂言小舞も披露された。
今回狂言二人袴のなかで舞われたのが「七つ子」だが、狂言の酒宴の場の余興として舞われることが多く、狂言を習う際にまず最初に覚えるのが狂言小舞だ。
おっとこ前も最初は狂言小舞を習い、最初に発表したのが「よしの葉」だった。
きちんと口を大きく開けて発声、抑揚や腹式呼吸を学び、正しい姿勢で舞を学ぶ。
舞は多くの「型」から形成されるが、例えば「左右」という型がある、これは今回舞われたすべての狂言小舞の一番最後の動作が「左右」だ。
ほとんどの狂言小舞の最後は「左右」で締めくくられますので、最初に覚えやすいかもしれません。
来年おっとこ前が演じる予定の狂言「棒縛」にも「七つ子」と「暁」の狂言小舞が舞われるが、「棒縛」の場合は太郎冠者の両手が棒で縛られ、次郎冠者の両手は後ろで紐で縛られている状態で舞いますので、普段とは違った狂言小舞が見れると思います。
そんな狂言小舞が単独で、しかもその日のうちに六番も観ることができるのは、とても珍しいと思います。
そして最後に能村祐丞師が番外狂言小舞として「名取川」を舞い、トメに付祝言を謡ってくれた。
一日の演能をめでたく舞いおさめる意味でさらに一番
猿と獅子とは 御使者のもの
是をば御代にをさめつつ
猶 千秋や萬歳と
俵を重ねて めんめんに
俵を重ねて めんめんに
俵を重ねて めんめんに
楽しうなるこそ めでたけれ
2月14日は旧暦で1月7日、正月松の内に申年のめでたい謡だ。
今回撮影に使用したカメラだ。白レンズの様相をちょっぴりのぞかせているが、赤いバンダナはシャッター音を少しでも小さくするため。撮影用の腕章は堂々と撮影するため。
私の愛機は設定でシャッター音を静音にできるが、それができないカメラも多い。
能楽堂はとにかく音が響くのだ。観客の真横に立ってパシャパシャ撮影したり、観客の真後ろでフラッシュを発光させることはプロアマ問わずカメラマンとしてのモラルに疑問を感じる。音の出ない明るいレンズを付けたデジカメで撮影してほしいと切に願う。
そしてもう一つ残念なことは、脇正面最後部に陣取っていたにも拘らず誰も…
バレンタインなのに…
誰もだよ…
ああ…何しに来たんだよ by おっとこまえ