投稿日:2017年6月12日

出羽の山伏巡り

貝をも持たぬ山伏が

道々嘯みちみちうそを吹かうよ

是は出羽の羽黒山より出でたる山伏

此度大峰葛城を致し

唯今が下向道でござる…


こんな台詞からはじまるのは、二年前に素人として初舞台で演じた狂言柿山伏。狂言によく出てくる山伏の出身の地として出羽の羽黒山がよく出てきます。

狂言では「この辺りの者…」などと自身の出地をあいまいに表現することが多いのですが、山伏に関しては”出羽の羽黒山より出でたる山伏”と強調して言っている所が妙に面白みを感じたりもしていました。「この辺りの山伏…」でもいいのに(笑)

出羽の羽黒山の山伏ってそんなに有名なの??

大峰葛城…修験道の開祖とされている役行者(役小角)は奈良県吉野だったよなぁ…などと思いつつも、柿山伏を演じる四ヶ月ほど前に山形県村山市を訪れ内陸より月山を見ていた記憶が甦ったこともあり、機会があれば一度出羽の羽黒山に訪れて見たいと常々思っていました。

そんな”機会”が実現することになろうとは…

金沢発の”おくりいえ”が目出度く40回目を秋田でむかえることになり、金沢から8名、現地集合!現地解散(笑)

ならば!

九日間のプチ旅…もっと奥の細道ふらり記

出羽の山伏巡り

さて…「みちのくの奇祭」として知られる山形県鶴岡市の天神祭が25日に本祭りを迎え、その熱気冷めやらぬ午前2時頃に出羽三山神社への有料道路ゲート付近に到着した。

別名「化けもの祭り」といわれ、化けもの姿で道行く人に無言で酒を振る舞い、3年続けて正体を知られずにお参りできると願い事がかなうとされるらしいが、そんなすんばらしいお祭りに間に合わなかったことは残念無念。

とりあえず6時頃まで月山ビジターセンターの駐車場を借りて車中泊を決め込んだが、トテモ寒い!5月下旬とはいえ明け方はさすがに冷え込む。

月山ビジターセンターのねこ

出羽三山は羽黒山、月山、湯殿山の総称で、修験道を中心とした山岳信仰の場として現在も多くの修験者、参拝者を集めているらしく、開祖は能除仙のうじょせん。修験道の最高法儀といわれる柴燈護摩さいとうごまを能除仙が役行者に授けたという伝承があり、羽黒山は修験道の根本であるとして「古修験道」と云われているらしい。

ねこもなるほど。

月山ビジターセンター近くにある羽黒山山頂へ向かう有料道路のゲートが中々開かないので、先に里まで下りて五重塔でも見ることにした。

羽黒山の石段

宿坊やお土産屋が並ぶ参道から随身門を抜け、山を登るかと思いきや、下りの石段が待ち構えていた…と同時に瞬時に空気が切り替わった。

小さな滝や鶯などの音、風のない瑞々しい新緑の香り、体の中…特に肺が綺麗になる感覚。かすかな耳鳴りが大きく聞こえる(笑)

パワースポット…ではない、聖域。

く…熊…出ないかな…

国の天然記念物 羽黒山の爺スギと国宝 五重塔

出羽三山神社の摂社群を抜けると、国の天然記念物に指定されている「羽黒山の爺スギ」が目前に現れる。樹齢千年以上経過している「爺スギ」の側には明治35年に暴風に倒れた「婆スギ」も存在していた。そして少し目を横に向けると国宝に指定されている「羽黒山五重塔」がひっそりとたたずんでいる。大国主命が祀られているこの五重塔は慶長13年(1608年)最上義光公による大修造以来そのままの姿を残している。

そしてその五重塔の番人…に見えてしまう、木枯し紋次郎風な石灯籠。

木枯し紋次郎みたいな石灯籠と羽黒山五重塔

この先頂上まで果てしなく続く石階段を前に徒歩での参拝は断念し、一路有料道路にて羽黒山頂上を目指すことに。

出羽三山神社 三神合祭殿

出羽三山神社

三神合祭殿は一般神社建築とは異なり、一棟の内に拝殿と御本殿とが造られており、月山・羽黒山・湯殿山の三神が合祀されているところから、合祭殿造りとも称されるらしい。一棟の内に拝殿と御本殿というのは神社っぽいが、神仏習合の名残でもあり山岳信仰の場でもある寺院を思わせる要素があちこちで見られます。

出羽三山神社 三神合祭殿

三神の中央に位置する月山神社の扁額の横には木彫の力士が睨みを利かせ、どこからともなく聞こえてくる法螺貝の音が山岳信仰の中心地であった静寂の境内にいい感じの緊張感をもたらしてくれた。

出羽三山神社 境内

出羽三山音頭

<ハアー>

国家くに守護まもりを仰ぐも高し

出羽の三山 出羽の三山 神の山

<サテ>

神の山ならよいとこな

<いやさか栄えて音頭でハイ>

出羽三山神社の大鳥居と月山

さて、出羽の国山形で羽黒修験道のほかにもうひとつ存在するのが鳥海修験だ。月山より北にあり秋田県との県境に位置する鳥海山のその登山口ごとに発展していった修験道で、本日は山形県側の蕨岡口わらびおかぐち吹浦口ふくらぐちの二社を訪ねてみた。

鳥海修験は役行者(役小角)の教えを踏襲し羽黒修験道とは一線を画しているが現代では完全に崩壊している。

鳥海山物忌神社 蕨岡口ノ宮

写真上が鳥海山大物忌神社蕨岡口宮、下が吹浦口宮

出羽國一宮でもある鳥海山大物忌神社は麓の蕨岡と吹浦の2か所の登山口の宮(里宮)総称して大物忌神社といわれ鳥海山を神体山としています。

鳥海修験時代から一宮までの派閥などの争いが絶えなかったようだが、現代では吹浦口の宮で神職が常駐し御朱印も蕨岡口の宮の分も頂けるようになっている。

鳥海山物忌神社 吹浦口ノ宮 下拝殿

修験道は日本古来の古神道や密教、道教など仏教色の強い神仏習合の日本独自の宗教で、鳥海山大物忌神社などは修験道の面影はほとんど残されていないが、建築物をよく見ると神仏習合を感じさせる要素が多く残っている。また山形県には県境も含めると、出羽三山と鳥海山以外に蔵王や甑岳こしきだけ古流修験本宗などがあり、山形の蔵王は蔵王権現からとられている。また全国にある即身仏の約半数は山形に存在しています。

道の駅 象潟 展望室からの鳥海山

道の駅 象潟 展望室からの鳥海山と日本海

秋田県にかほ市の国道7号線沿いにある道の駅象潟「ねむの丘」六階展望塔からは鳥海山やその地形、芭蕉も愛した象潟九十九島、日本海など全方向楽しめます。

出羽三山神社と鳥海山物忌神社(吹浦口と蕨岡口)の御朱印

もっと奥の細道ふらり記1出羽の山伏巡り

修験道に興味が…というより自然の中に身を投じその息吹などを感じる生活は、少なくても自分自身で考え抜くチカラが宿るのかな…なんてことを山伏とダブらせて少しでも体感したかったのだろうか。自分の意識の引き出しの中にそんな想いがあったような気がする。自然の匂いを忘れてはならないと思う初日でした。

次回はチョウクライロ?? by 巨木に触れよう!おっとこまえ

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