投稿日:2018年10月14日

水の兄

 秋の雨音が街の騒めきを包み消して自然の存在を教えてくれる。滝やせせらぎ、そして雫。水にまつわる音や匂いがこよなく好きだ。

 それはきっと両親の生まれ育った環境に「川」が存在し、母体に居るときから川の流れる音を聞いていたからかもしれない。

 ところが、北へ北へと転居する度に川から遠ざかってしまった。川が感じられる場所で住みたいと本能が叫んでいる。

 どうやら私は陰陽五行でいうところの「みずのえ水の兄みずのえ〉」に当てはまるそうで…流れる川のような性質があり、自由を求め束縛されるのを嫌い、旅から刺激を受ける。そして一度決断したら、良し悪し問わず意思を変えない頑固もの。開拓精神が旺盛で、未知のものを恐れない。らしい…。

 たしかに時間にしばられ、身動きを限定され、長い順番待ちや交通停滞。思考に蓋をされ、言動に制限をかけられることに深いストレスを感じてしまう。

だから…

だからなのか!

 かるく水ですすいだ氷をグラスに転がしキツめのお酒を程よく浸す。それをカラコロ鳴かせながら、待ちわびた風な笑みをうかべると、店主が優しくほくそ笑む。そしてがっつり土手腹へ注ぎ込むと、街の喧噪を消していた雨音でさえもその存在を控えてくれる。

 忘れられない憂いが及ぼす心の渇水をお酒で補い、頭の隅っこにでもしまっておく。憂いを忘れ去ることはできないが、しまっておいた場所が見当たらない…。それっくらいがちょうどいい。嫌なことはやんわりぼやかすんだ。

 雨が喧噪をぼやかすように…。

壬は怒ったら手が付けらんないらしいよ by おっとこまえ

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